**米国雇用統計では、「仕事がどれだけ増えたか」と「働く人と、仕事を探して働ける失業者の合計のうち、何割が失業者か」を分けて読みます。**二つは調べ方も数える対象も違います。一つの見出しだけで景気や値動きを決めず、数字が生まれる仕組みを確かめましょう。

一つの発表に、違う調査が入っている

雇用統計は、米国のBLSが公表する仕事に関する資料です。よく注目されるのが、の前月からの増減です。英語ではNFPなどと呼ばれます。ここでは「給与が支払われる仕事の数」と考えましょう。

事業所に聞く調査では、農業や自営業などを除いた仕事を数えます。別に、家計へ聞く調査があり、こちらからなどを計算します。「会社側の仕事の数」と「人の働き方」を、違う窓から見ているのです。

一人で二つの仕事をしていたら?

架空の町に、パン屋だけで働く人が一人、書店だけで働く人が一人、パン屋と書店の両方で働く人が一人いるとします。働く人は合計三人ですが、給与を受け取る仕事は四つあります。

事業所調査は仕事を数えるため、条件に合う二つの仕事を持つ人はそれぞれに数えられます。家計調査では、一人は一人です。「仕事が四つ増えたから、四人が新しく働いた」とは限りません。この違いを知ると、二つの調査が違う動きをしても落ち着いて読めます。

架空の町のAさんとBさんは仕事を一つずつ、Cさんは二つ持つ。働く人は三人、仕事は四つ。

図1:架空の町の例。三人が四つの仕事をしているため、仕事数と人数は一致しません。

失業率の分母は、全国民ではない

失業率は、仕事がなく、仕事を探していて働ける人などを、働いている人と失業者を合わせた「労働力人口」で割った割合です。子どもや、仕事を探していない人を含む全国民で割る数字ではありません。

架空の町で働く人90人、仕事を探す失業者10人なら、労働力人口は100人、失業率は10%です。翌月、失業者から5人が働き始めても、別に10人が新しく仕事探しを始めたら、働く人95人、失業者15人になります。

このとき、失業率は15÷110で約13.6%です。仕事に就く人が増えても、仕事を探す人がそれ以上に増えると失業率は上がります。これは仕組みを学ぶ単純化した例で、実際の米国の数字ではありません。

架空の町で就業90人と失業10人から、就業95人と失業15人へ変化。失業率は10%から約13.6%へ上がる。

図2:架空の労働力人口の変化。就業者の増加と失業率の上昇が同時に起きる例です。

仕事探しをやめて調査上の失業者から外れる人が増えると、失業率が下がる場合もあります。低下という見出しだけで安心せず、働く人や仕事を探す人の動きも一緒に見る理由がここにあります。

賃金と働く時間も、横に置いて読む

毎月の発表には平均時給や、週に働く時間などもあります。時給が上がっても、働く時間が減れば、一週間の受取額は思ったほど増えないことがあります。架空の時給20ドルで週30時間なら600ドル、21ドルで28時間なら588ドルです。

これは個人の単純な計算例です。公式の平均時給は全員に同じ賃上げがあったという意味ではありません。高い時給の仕事が増えるなど、働く人の組合せが変わって平均が動くこともあります。

実際のケース:2024年1月の公表を開く

BLSが2024年2月2日に出した2024年1月の発表では、非農業部門の仕事は前月から35万3千増え、失業率は3.7%で変わらずでした。「増えた仕事の数」と「失業者の割合」が別々の単位で示されています。

同じ発表では、2023年12月の仕事の増加が21万6千から33万3千へされました。今回の35万3千と比べるとき、先月の古い21万6千を使うか、改定後の33万3千を使うかで見え方が変わります。

ここで示したのは、その日に公表された値です。後の更新を含む現在の最新系列ではありません。BLSは、追加の回答、季節要因の再計算、年ごとの照合などが改定に関わると説明しています。発表当時に分かった情報と、後で分かった情報を分けて残しましょう。

BLSの調査比較資料でも、事業所調査は仕事、家計調査は人を数えることが確認できます。二つの数字が同じ方向でないからといって、すぐ「どちらかが間違い」とは判断できません。

強い雇用なら、いつもドル高?

仕事の増加は経済の活動を支える材料です。一方、賃金や物価、金利の見通しにも関係します。結果が発表前の見込みとどう違ったかも大切で、雇用が増えたという一行だけで為替や株の向きは決まりません。

の数字を使うなら、集計会社や時点を確認します。分からないときは、前回と今回の公式値を読むところで止めて大丈夫です。発表の前後には価格が急変し、という注文価格のずれが起こる場合もあります。

「何万人増えた」は、差し引きした結果

一か月に新しく雇われた人が30人いても、仕事を離れた人が20人いれば、差し引きの増加は10人です。雇用統計の仕事の増減を見て「新しく働き始めたのは10人だけ」と読むことはできません。増えた動きと減った動きを差し引いた数字だからです。

また、毎年の年末商戦などでは、季節によって仕事が増減しやすくなります。ニュースで使う季節調整済みの数字は、その繰り返しをならして比べやすくしたものです。調整前の数と混ぜると、変化を大きく見誤ることがあります。

一つの月だけで結論を急がず、同じ定義の数字を数か月分並べてみます。ただし、最新の表で過去も更新されていれば、その版をそろえた比較だと記しておきましょう。

まとめ:仕事数・人数・割合を混ぜない

非農業部門の増減は、主に事業所から見た仕事の数。失業率は、家計調査から計算する人の割合です。分母が変わると失業率も変わります。賃金や時間、過去の改定も並べ、見出しより一段深く読んでみましょう。

次は、二つの調査の欄を探そう

公式発表から、仕事の増減、失業率、前の月の改定を一つずつ探してください。口座がある人は発表前後の表示を観察し、どの時刻の情報かも記録します。注文はしなくても練習になります。

これから口座を持つ人は、口座の比較で経済ニュースとデモの使いやすさを確かめましょう。投資では損失が出ます。FXは預けたお金を超える損失もあるため、最初は仕組みを説明できることを目標にしてください。