**MACDは、短い期間と長い期間の平均の差から、値動きの勢いを見やすくする指標です。**線の交差、0の上下、棒の長さは、それぞれ比べているものが違います。この記事では、画面の2本の線と棒を、順番に読み分けます。

自転車の最近の速さと、少し長い時間の平均の速さを比べる場面を考えてください。最近の方が速ければ、加速した様子が見えます。ただし、平均を見てから先の道が決まるわけではありません。MACDも、これまでの価格から作る比較の道具です。

最初は、二つの平均の差を見る

は「マックディー」などと呼ばれます。一般的な設定では、12期間のから26期間のEMAを引きます。EMAは、新しい価格を重く扱い、古い価格の影響を少しずつ小さくする平均です。

日足なら12日と26日分の足が計算の基本になります。1時間足なら12本と26本の1時間足です。単純に最近12個の終値を足して12で割る平均とは、計算の作り方が違います。

図1は、ある時点で短い平均が1,020円、長い平均が1,000円だった架空例です。差は20円で、MACDはプラス20円。短い平均が980円なら、差はマイナス20円です。

架空の短期EMA1020円または980円と長期EMA1000円との差でMACDプラス20円マイナス20円を示す図

図1:架空のEMAの要約値。1,020円−1,000円=20円、980円−1,000円=−20円。12期間と26期間の差を比べる考え方です。

0より上なら短い平均が長い平均より上、0より下ならその逆です。「プラスだから今日の株価が上がった」とは限りません。今日下がっていても、過去を含む短い平均がまだ高ければプラスが残る場合があります。

シグナルは、MACDをならした線

画面にもう1本あるは、MACDそのものを平均してなめらかにした線です。この記事では一般的な9期間EMAを使います。「12と26の平均」に加え、「差の9期間平均」があると考えましょう。

MACDがシグナルを下から上へ抜ければ、最近の差が、その差の平均より上へ動いたことになります。勢いの変化として注目する見方がありますが、その後の上昇や利益を保証するものではありません。

価格が小さく上下する場面では、交差が何度も起きることがあります。交差するたびに売買を繰り返すと、値幅が小さくても費用が積み上がります。見やすい交差だけを選ばず、行ったり来たりする場所も見ておきましょう。

棒は、MACDとシグナルの差

は、この画面ではMACDからシグナルを引いた差を棒にした表示です。たとえばMACDが20円、シグナルが15円なら、棒はプラス5円です。

独自の架空日足終値をEMA12期間26期間とシグナル9期間EMAで計算しMACDとヒストグラムを示す図

図2:独自の架空日足終値から計算した12・26期間EMAの差、9期間EMAのシグナル、両者の差の棒。縦軸は円、横軸は日です。

棒がプラスからマイナスへ変わる所は、MACDがシグナルを上から下へ抜ける所です。一方、MACDが0を下回るのは、短い価格の平均が長い平均を下回る所。同じ「0を越える」でも、どの線の0かで意味が違います。

また、棒が短くなっても、価格がその場で反転したとは限りません。二つの線の差が縮んだ事実を示すだけです。線と棒の色は道具ごとに違うため、赤や緑だけで売買の意味を決めないようにしましょう。見慣れない色は凡例で確かめます。

設定と単位を確認してから比べる

12・26・9はよく使う設定の一つであり、すべての市場や期間で最適とは限りません。平均の方式を変えられる画面もあるため、数字だけを同じにしても完全に一致しない場合があります。

EMAは、計算を始めるときの最初の値をどう作るかでも初めの方が変わります。この記事の図では最初の終値を出発点にし、十分な準備期間を計算してから後半を表示しています。

さらに、価格が円ならMACDも価格差の円です。1,000円の株と1万円の株でMACDが同じ20円だから、勢いが同じと単純には言えません。RSIのように0〜100へ決まった範囲で収まる指標とも違います。

実際のケース:FidelityとTradingViewの計算仕様

Fidelityの公式ガイドは、12期間EMAと26期間EMAの差、9期間EMAのシグナルという一般的な例を紹介しています。数値は目的に合わせて変えられる設定で、唯一の正解ではありません。

TradingViewの公式解説は、MACD、シグナル、二つの差の棒を区別し、平均方式などの設定も説明しています。自分の画面の棒が何の差なのかを確認する、実在の道具の例です。

どちらも指標の仕様や使い方の説明です。ある人がこの交差でいくら稼いだ、という実績を示していません。この記事の価格系列と平均の数値も、独自の架空例です。

交差を見つけた後の損失も考える

仮に、交差を見て1,000円で100株を買い、950円で取引を終えた場合、費用前の損失は5,000円です。MACDの棒が小さくても、取引数量や実際の値幅に応じて損益は出ます。

「次の交差まで待つ」と決めると、終了する価格が遠くなる場合があります。線の動きだけに任せず、どれくらいの損失を引き受けるか、価格の急変で予定どおり終えられない場合も含めて考える必要があります。

まとめ:何と何の差かを分けて読む

MACDは二つの価格の平均の差、シグナルはMACDの平均、棒はMACDとシグナルの差です。交差と0の上下を、別の比較として読めることが最初の目標です。過去から作った線は、次の価格の答えではありません。

次は、自分の口座で線と棒を照合しよう

日足にMACDを出し、期間と平均の方式をメモします。MACDとシグナルが交差した場所を一つ探し、棒が0付近になっているか確かめましょう。次に、MACDが0を越える位置との違いを見ます。

口座を持たない人は、設定の説明、線の区別、過去の見やすさを口座・ツールの比較で確認してください。売買には損失があります。交差の後に逆向きへ動いた例も残し、まず観察だけで読み分けを練習しましょう。