**現物取引は自分が用意した代金で株を買い、信用取引は資金や株を借りて売買します。信用取引では、預けた保証金を超える損失が生じる可能性があります。**この記事では、同じ株価の変化でも、動かす株数や返済の条件で負担が変わることを学びます。
自分の道具を使うのと、借りた道具を使って返すのでは、できることと必要な手続きが違います。株でも、持っている代金で買う取引と、借りた資金や株を後で返す取引を分けます。画面の名称が似ていても、気軽に切り替える機能ではありません。
現物は代金を用意し、買った株を保有する
現物株を買うときは、代金と費用を用意します。1株1,000円の株を100株なら、代金は10万円です。株主としての権利を持ちますが、株価が下がる場合や、配当がなくなる場合があります。
値下がりしても必ず戻るわけではありません。会社が倒産するなどして株の価値が失われれば、買ったお金の大部分や全部を失う可能性があります。ただし、通常の現物株の購入では、株価の下落だけで購入代金を超える値下がり損が発生する仕組みではありません。手数料などは別です。
信用は、保証金を置いて資金か株を借りる
は、証券会社へ委託保証金という担保を預け、資金または株を借りて売買する方法です。買うための資金を借りる信用買いと、株を借りて先に売る信用売りがあります。後で返す必要があり、借りる費用や返済期限の条件も関わります。

図1:現物と信用を比べた模式図。信用で借りられる範囲や返済条件は、取引の種類と証券会社で違います。
保証金10万円で必ず30万円分を取引できる、という意味ではありません。信用取引には最低保証金や率のルールがあり、証券会社がさらに厳しい条件を設ける場合もあります。以下の計算例は、使える口座の最低額を案内するものではありません。
同じ10%の値動きで、円額を比べる
架空の例で、自己資金30万円を用意します。現物は1株1,000円を300株、代金30万円。信用買いは保証金30万円に対し、同じ株を900株、代金90万円分と仮定します。ともに1週間後に売却し、手数料、金利、配当、税金はまず除きます。
株価が1,100円なら、現物の利益は100円×300株で3万円。信用買いは100円×900株で9万円です。900円なら、現物で3万円、信用買いで9万円の損失。同じ株でも株数が3倍なので、値動きの影響も3倍になります。

図2:自己資金30万円、現物300株と信用買い900株の1週間の架空例。費用等を除き、損益は上下3万円と9万円。実際の利用条件ではありません。
信用取引の方が利益を出しやすくなったわけではありません。価格が上がるか下がるかが同じでも、数量を増やしているだけです。実際には信用の金利などが加わるため、同じ株数を売買した現物と比べても、費用の条件が異なります。
例えば、この信用取引で別途の費用を仮に1,000円とすれば、上昇時の利益は89,000円、下落時の損失は91,000円です。これは実在の料金ではありません。値動きで勝ったときだけでなく、負けたときも費用が残ることを示しています。
信用売りは、下がると利益になり得る
信用売りでは、借りた株を先に売り、後で買い戻して返すのが基本です。1株1,000円で100株を売り、900円で100株を買い戻せば、費用前の差額は1万円のプラスです。1,100円へ上がれば、1万円のマイナスになります。
株価の上昇には、購入価格のゼロというような決まった終点がありません。そのため、売りから始めた取引の損失は、当初想像した金額を大きく超える可能性があります。「下落でも利益を狙える」の裏側に、上昇したときの負担があります。
借りる株が不足すると追加の費用が生じる場合もあり、売買の差だけで結果は決まりません。株主優待や配当などの権利の扱いも現物と同じではありません。名前を知っている会社でも、借りる条件まで理解しないと見落としが生まれます。
保証金が減ったときの対応も契約の一部
信用取引で損失が増えると、保証金の状態が基準を下回り、追加の保証金を求められる場合があります。いわゆる追証です。期限までの対応が必要で、条件によっては証券会社が取引を終了します。
急変や売買の停止で予定した価格で返済できず、保証金以上の損失や不足金が生じることもあります。預けた分までしか失わないという理解は誤りです。家計に使う資金や、必要な支出を保証金へ回さないことが必要です。
実際のケース:JPXが説明する資金と株の貸付け
JPXの信用取引の解説では、買付資金や売付株式を証券会社が貸し付ける仕組みが示されています。一方、松井証券の現物取引ルールでは、現物の買付余力や注文の扱いを確認できます。
ここで比べるのは、制度の構造と実際の会社の運用条件です。JPXの説明を読んだだけで、自分がその額まで借りられると決めることはできません。申込みの審査、保証金、返済、費用は、自分が使う会社の書面で読みます。
信用を学ぶときは、利益の計算だけでなく「借りた物をどう返すか」を自分の言葉で説明します。返す期限や追加の費用が分からない場合は、現物の画面と取り違えないことが第一です。仕組みを理解するために、実際に借りて試す必要はありません。
まとめ:借りることで増える義務を知る
現物は代金を用意して買い、信用は保証金を置いて資金や株を借ります。信用は数量を増やせる一方、損失、費用、返済や追加保証金の負担も増えます。現物にも値下がりのリスクがありますが、両者の負担は同じではありません。
次は、取引区分の表示を見つけよう
口座がある人は、注文前の「現物」「信用」の欄と、取引ルールへのリンクを探します。理解していない区分は選ばず、現物の予定代金を確認するだけでも練習になります。初めて選ぶ人は株式口座の条件を比較するへ。信用口座を追加することを急がず、まず現物との違いを説明できるか確かめてください。